ワタシは、希望もしていないのに、
欲してもいないのに、
八重歯がある。
しかも、2本。
小さい頃から、ドラキュラ、と言われ続け、
何度、親に抜きたい、と言ったことか。
しかも、最高に歯並びが悪く、
虫歯になりやすかった。
実は、物心ついた時から、ガムを噛んでいた。そうである。
「この子は、ガムが好きだから」と、箱買いしていた。そうである。
夜、寝るときも噛んでいたようで、
乳歯は、当然のごとく、早くから全て虫歯になり、歯がない時期は、
長かったのではなかろうか。
そして、大人の歯がやっと生えて来たと思ったら、
ガタガタで、八重歯まで、ニョキニョキ。
恐ろしき口腔内事情である。
当然、ガムを止めることはなく、
また、虫歯三昧。
おばあちゃんが、いつもいつも、学校からの虫歯のプリントを持って、
歯医者に連れて行ってくれた。
小学生のいつだったかなぁ、八重歯を抜いた方がいいと思った親が、
歯医者に相談したら、もう、鼻の横まで根あるから、
抜かない方がいい、と言われた、と確か言っていた覚えがある。
それから、
小柳ルミ子も、あるから、いいやん。
かわいいで。
と、おだてられたような。
あちらは、片方八重歯で、のちに、抜いてニュースになっていた。
こっちは、ドラキュラ。
どこが、かわいいねん。
と、思いつつ、ずっと、そのまま。
気にとめることもなく、人とは違う歯にも、いつしか、愛着が湧くのである。
「これが、ワタシだ」と思うようになり、
笑いのネタにもするようになった。
そして、ここへきて、
治療をする日が来るとは。
加齢とともに下がる歯茎から、エナメル質が溶けて、何やらヘンテコな八重歯になっていた。
でも、あまり気にならない大きさだし、いっかぁ。と思っていたのだが、要治療対象だった。
違う歯の治療が終わると、いきなりそれは始まった。
八重歯と接触している歯茎のあたりを綺麗にし、凹んでいる部分を何かで埋めていく作業を、あの、「うい〜ん」という機械が行ったりきたり。
歯の中で、忙しく工事が進んでいた。
あっという間に、その工事は終わり、
鏡を見ると、
「OH~MY~ご〜〜〜っど」
にょっきり前に出た牙が、つやつやと光り輝いていた。
これは、正解なのか。
オットが言う。
「アピールポイントがあるのは、いいことや」
それは、褒め言葉なのか。
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