あんなぁ あのね

『心の時間

「はぁー、疲れた」「力出えへん」
自宅でやっている絵画造形教室に来る小・中学生の第一声は、ほとんどがこれ。こちらまで、「はぁー」となるぐらい、気だるい空気を連れてやってくる。反対に、「こんにちは」「今日、何するん?」と、ピカピカした空気を連れてくるのは、幼児さん。この違いに、思わず笑ってしまう。
朝から昼過ぎまで小学校で非常勤講師をして、そのあと自宅で教室を担当しているので、子どもたちの一日をトータルに観察できる。学校に再び今年から勤務し始めて、気付いたのは、先生も子どもたちも、盛りだくさんのやらなければならないことに、一生懸命だということ。
すごいパワーが、ぶつかり合う学校から、出たとたん力が抜けるのだろう。そこに、また違うやらなければならないテーマを与えた場合どうなるかというと、たいてい適当にこなす。子どもは、うわてである。大人が、自分のやったことに対してどういう反応をとるか、ちゃんと見ながら、うまくヤル。
だから、私は教室で、あえてやらなければならないテーマを与えないことの方が多い。とにかく、心を開放してほしいな、と思っている。何者にもとらわれない、幼児の頃のような感覚で、色で遊ぶ。そこに見えてくるものは、とりつくろわない飾らない自分。
でも、なかなか遊べない子もいる。ガチガチに力が入りきった心を開放するのは容易ではない。その子を取り巻く環境すべてが、力ませている。だからこそ、力みが取れる瞬間の笑顔は、サイコー。ついつい「いい顔してるねー。いいよー」と、有名な写真家のごとく、デジカメで撮りまくってしまう。
匂いをかぐ、音を聞く、手でさわる、目で見る、味わう。本能のまま楽しむ時間。心が感じる時間。そこから何かを見つけてほしい。思いをいっぱい持って、子どもと向き合っている。大人にこそ、こういった時間は、必要なのかも。現に、私も子どもたちと遊びながら、自分を見つめている。何ができるのか。何がしたいのか。(2003.6)

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